ウィスカ対策 ∼Sn系めっき『ウィスカ』についての解析∼(当社技術レポート内容から抜粋)

『ウィスカ』とは

ウィスカ(Whisker)とは、金属表面に針状やノジュール状の金属単結晶が自然成長により成長する現象であり、SnめっきやZnめっきから発生することが知られている。問題としては電子回路間にウィスカが成長し、これによりショート・短絡が起こるなどが挙げられる。 発生原因として、『金属間化合物/拡散の影響』『ガルバニック腐食による影響』『外部応力による影響』『熱膨張係数の差による応力の影響』等 様々な要因が考えられているが、根本的なメカニズムは解明されていない。現在、取り組まれているウィスカの試験方法(一例)及びウィスカ発生事例を以下に示す。
 
Fig.1:ウィスカ評価方法一覧(一例)
 
試験目的
試験環境及び時間
室温放置試験
主に、金属間化合物/拡散の影響により発生するウィスカ成長の観察 室温5000h 放置
恒温恒湿試験
主に、ガルバニック腐食により発生するウィスカ成長の観察 55℃ -85%RH 5000h
温度サイクル試験
主に、熱膨張係数の差により発生するウィスカ成長の観察 -40℃⇔85℃(各保持温度10〜30min)1500サイクル
-55℃⇔85℃(各保持温度10〜30min)1500サイクル
外部応力試験
外部応力の影響により発生するウィスカ成長の観察 @コネクタ嵌合試験(実製品を用いた嵌合試験)
A 荷重試験…球形0.1 φのジルコニア球を用い一定荷重
(300gf) で500h 保持
 
Fig.2:ウィスカ発生事例
室温放置試験下で発生したウィスカ
恒温恒湿試験下で発生したウィスカ
温度サイクル試験下で発生したウィスカ
外部応力試験下で発生したウィスカ
 
室温放置試験下で発生したウィスカ
高温高湿試験下で発生したウィスカ
温度サイクル試験下で発生したウィスカ
外部応力試験下で発生したウィスカ
 
 
『ウィスカ抑制策』は…
ここでは、弊社のSnウィスカ抑制に関する取り組みとして、金属間化合物の成長に主眼をおいた解析(提案)例を示す。
 
 
 

提案例@:
下地めっきの検討

下地めっき(一般的にはNiまたはCuめっき)の種類を変えることで金属間化合物の成長または、拡散速度に大きな違いが見られる。 Fig.3 にNi及びCu下地めっき後にSnめっきを施し、20000h室温放置後に純Snめっき層をエッチング処理し、SEM観察した写真を示す。下地Cuめっきの場合、Cu6Sn5化合物がSnの粒界に沿って『こぶ状』に成長するのに対し、Niめっきは薄箔状に成長している。 下地Niめっきで得られるウィスカ抑制効果は、Ni3Sn4化合物層が薄箔状に成長することで、純Snめっきに層に与える内部応力を緩和しているものと推測する。

Fig.3:下地めっきの違いによるSn化合物成長の違い
Niめっき上のSnめっきエッチング後
Cuめっき上のSnめっきエッチング後
 
Niめっき上のSnめっきエッチング後
Cuめっき上のSnめっきエッチング後
 
 
 
 

提案A:
合金めっきの検討

Snめっき皮膜中に第二金属を添加する方法もウィスカ抑制または、はんだ濡れ性改善の為の有効的手法と考えられている。 Fig.4 にC1100上に各種Sn系めっきを施し20000h室温放置後、エッチング処理をし化合物層の成長を観察した結果を示す。

Fig.4:仕上げSn系めっきの違いによるSn化合物成長の違い
C1100上の
純Snめっき
C1100上の
Sn-Biめっき
C1100上の
Sn-Cuめっき
C1100上の
Sn-Pbめっき
 
C1100上の純Snめっき
C1100上のSn-Biめっき
C1100上のSn-Cuめっき
C1100上のSn-Pbめっき
 
第二金属を添加することにより、Sn化合物の成長に大きな違いが見られる。Sn-PbめっきおよびSn-Biめっきは、Snめっきと比較し『こぶ状』の化合物の粒径が小さくなっており、Sn-Cuめっきにおいては、『こぶ状』ではなく『柱状』に成長している様子が分かる。それぞれがSnめっき(熱処理なし)よりもウィスカ抑制効果があることが弊社室温放置試験結果で得られている。 また、Fig.3で示した下地めっきを組み合わせることで、Sn系めっきの化合物生成状態または、拡散挙動が更に変わることが分かっており、より高いウィスカ抑制効果が得られると期待される(現在調査中)。
 

提案B:
めっき後 後処理の検討

仕上げめっき後に熱処理(アニール処理)を加える方法も、一部製品では量産化された技術となっている。 Fig.5 にC1100上にSnめっき−後処理有無を施し20000h室温放置後、エッチング処理をし化合物層の成長を観察した結果を示す。 結果が示すように、熱処理を行うことにより、Cu6Sn5の化合物成長が抑制されている様子が分かる。

Fig.5:仕上げ熱処理有無によるSn化合物成長の違い
C1100上の純Snめっき熱処理なし
C1100上の純Snめっき
 
C1100上の純Snめっき熱処理なし
C1100上の純Snめっき
 
 
本項では、『下地めっき』『仕上げめっき』『後処理』という めっきプロセスの中での改善を行い、金属間化合物の成長を抑制できることが分かった。また、一部の環境試験下でのウィスカ抑制効果も確認できた。この解析結果を元にそれぞれの特性を生かしたウィスカ抑制法を提案し、現在 お客様に対して安定した量産実績に結び付いている。  但し、『腐食により発生するウィスカ』または、『熱膨張係数の違いにより発生するウィスカ』、『外部応力により発生するウィスカ』は発生メカニズムが異なるため、違ったアプローチ・改善が必要となる。
ニシハラ理工(株)は全ての環境試験下での『ウィスカ発生ゼロ』を目指し、現在も様々な視点からの評価・解析に取り組み開発に繋げています。